独立開業を成功へ導く経営学

統括プロデューサー 今井義博の経営学。

メディカル・ブランドの構築を考察する ⑤

 A医院のグランドオープン前の内覧会で収集したアンケートについてブランド・マーケティングの角度から掘り下げて分析をしてみよう。

 

 「患者が歯科医院を選ぶポイントは何であるか?」について聞いたのが以下の結果である。
歯科医院を選ばれるポイントは何ですか?
1位、58% 院長の対応
2位、56% 住まいに近い
3位、50% 治療説明
4位、39% スタッフの対応

 

 この結果を「当たり前」とだけとらえて良いのだろうか。
 既に述べたように、患者は院長やスタッフ(人間)を選択のポイント(感覚的価値)にあげている。決して歯科技術で選択しているのではない。初期段階でのアンケートだから「当たり前」だ、と終わらせることもできない。
 これは既存院長とスタッフに対する警告である。

 今までに診療を受けた既存の医院において、院長の対応や治療説明、スタッフの対応が悪いから新しくオープンした医院に期待を寄せて、いや、勇気をもってこの新規に開業したA医院のドアを開けたのである。患者自身の過去の経験で院長やスタッフの対応の「嫌な思い出」は、まぎれもなく既存の医院での経験である。
 近隣に新しい医院がいくつもオープンしたので患者が減った、という言葉をよく耳にする。これは大きな間違いである。患者は既存の医院での経験に苦い思い出があるから他の医院へ移るのである。

 

 一度離れた患者が戻ってくるという経験があるかと思う。単純に「嬉しいこと」である。しかし、事実を見逃してはいけない。事実は「患者が離れたこと」である。離れた理由は推測すればいくらでもあるだろうが、少なくとも原因を患者に求めるのではなく自己に求める、という発想をするべきである。
 つまり、「反省」である。

 

 イギリスの社会学者、アンソニー・ギデンズは近代社会の成立を「反省性」に見出している。このギデンズの理論を社会学者である浅野智彦氏が著書で解りやすく説明しているので紹介しよう。

 

 「反省性とは、社会が自分自身のあり方を常に観察・点検して、変化させていく働きです。近代社会とは、このような反省性がすべての制度の基礎に組み込まれているような社会であるとギデンズは考えました。近代以前の伝統的な社会ではしばしば過去のやり方に合致するように振る舞うことがプラスに評価されます。そこでは伝統が一種の根拠や土台となり、そこからはずれることは厳しく抑制されていました。他方、近代社会においては、一見同じ事を繰り返しているように見えても、それは常に観察・点検されており、その結果として、たまたま同じやり方が採用されているにすぎません。そこでは頼るべき土台・根拠はなく、絶え間ない観察・点検・修正があるだけ、言い換えると常に自らの姿を変えながら、絶えず先へ進んでいく強烈な運動があるだけなのです。」と。
 絶え間ない観察・点検・修正を行い、自らを変化させていなければ近代社会で生きているとは言えないのである。読者の医院は近代社会で健康に生きておられるだろうか。
 一方、患者の医院選びのもう一つのポイント、「スタッフ」をどのように観察・点検・修正されているのだろうか。

 

 最も重要なスタッフに焦点をあてることにしよう。
 私は、歯科医師および歯科医療技術者(歯科衛生士・歯科技工士)の紹介事業(当時の労働省の許可事業)を専門に行っていた実務者である。実務者として様々な「勤務医の問題」を経験した。その問題の内容は、今までに読者が経験した勤務医の問題の全てと言っても過言ではないかもしれない。勤務医のごまかし、責任転嫁、突然の退職や近隣での開業・・・モラルと責任感に欠ける行動・・・活字にすることさえ抵抗があることだらけである。
 数千件の求人者(歯科医院)と数万人の勤務医と直接面談し、年間300件以上のマッチングを行ってきた私が、どんなにベテランになっても勤務医と院長のトラブル、勤務医と衛生士のトラブル、そして、勤務医と患者とのトラブルを無くすことはできなかった。
 ここで、もう一度アンケート結果を確認していただきたい。

 

この医院の何に期待されましたか?
1位、53% スタッフがどんな人か

   53% 最新歯科情報
3位、42% 院長がどんな人か
4位、33% 医療機器説明、当院診療方針

 

 驚くことに院長に対する期待よりもスタッフに対する期待のほうが上回っている。これは、患者が経験したことの中に、スタッフに対する不安やトラブルが多かったかを表していることに他ならない。
 それは、ほとんどにおいて医療技術よりも以前の『モラルと責任感』の問題であることは読者が一番良く知っていることである。ダリル・トラヴィスは、ブランド構築においても『モラルと責任感』の重要性について言及し、好例として金融ソフトのパイオニアとして成功したインチュイットがスタッフに対して提言している10のコア価値をあげている。

 

  1. 妥協しない誠実さ
  2. 全ての顧客に正しいことをする
  3. 大事なのは人である
  4. 最高を求める
  5. 常にプロセスを改善する
  6. 話し、聞き、答える
  7. チームワーク
  8. 顧客が品質を決める
  9. 素早い考え、迅速な行動
  10. 顧客をケアし、顧客に還元

 このように、成功している企業の価値(経営価値)の基本は、常にモラルと責任感を向上させるためにスタッフに対して、継続して表現伝達しているのである。

 

 ブランドとは贅沢品や高額品ではない。ブランドとは信頼と保証である。その品質を提供するのは、ブランドに等しい人財であることを忘れてはならない。

 

「ブランド!ブランド!ブランド!理屈を超えた強さをいかに築くか」(著者:ダリル・トラヴィス
・ダイヤモンド社)を購入することをお奨めしたい。

 

著者プロフィール 医科歯科開業、物件に関するご相談はこちら TEL 03-3833-3950 eMail info@keystation.com

今井 義博の写真

株式会社キーステーション 統括プロデューサー 今井 義博

経 歴

  • 1961年、東京生まれ
  • 暁星学園小中学校卒業(暁星歯学会・事務局長)
  • 早稲田実業学校高等部卒業(早稲田実業学校校友会・代議員、サッカー部OB会・副会長)
  • 早稲田大学専門学校建築設計課卒業・現早稲田大学芸術学校(稲門建築会会員)
  • (株)銀座コージーコーナー(店舗開発設計室)
  • (株)清水建設(OAセンターCAD開発)
  • (株)デンタルリサーチ社(職業紹介事業・東京都第1号)
  • Tokyo Expert Network of Japan(J-TEN)代表
  • (株)キーステーション(統括プロデューサー)
  • ニュー・マーケティング協会会員
  • 詳細プロフィールはこちら >>

著 書

  • 医療人事戦略(クインテッセンス出版)
  • リニューアル&ニューオープン(クインテッセンス出版)
  • 歯科医院経営近未来学(クインテッセンス出版)
  • 挑戦する医院経営(じほう社)
  • 医院経営と空間デザイン(Health Sciences Vol.24No1 2008日本健康科学学会誌掲載)

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統括プロデューサー 今井義博×学界著名人 対談テーマ:日本人の健康を考える

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