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- メディカル・ブランドの構築を考察する ②
統括プロデューサー 今井義博の経営学。
メディカル・ブランドの構築を考察する ②
ブランドを構築するためには個人の力では不可能である。卓越した『個人力』で数件の診療所を成功させている優秀な何人もの歯科医師を知っているが、これもまたブランドとしての確立には至っていない。それは『継承力』、つまり100年後200年後の歯科医院経営の姿が現状のマーケティングに存在しないからである。ブランドにはストーリーがあり、歴史があり、文化があり、維持継続する組織力があるのである。
しかし、医院が「自らに求める成功の定義」において、100年後(ブランドの構築)が必要であるか否かは自由選択であり、「ブランドを構築するべきだ」などと言うつもりは全く無い。ただ『個人力経営』を強化するためには『ブランド・マーケティング』に学ぶべきロジックがあることは確かなのである。
<エルメスの顧客無視型マーケティング>
例えば「エルメス」を取り上げてみよう。「エルメス」の名誉に関わることなので付け加えておくが、その自己主張はより優れた品質を提供するために、時には顧客の要望をコントロールする場合があるということである。それを、あえて顧客無視型と表現させていただいた。
「エルメス」と言えば、ベストセラーで有名な『ケリー・バック』。しかし、「エルメス」の自己主張である象徴的商品は「バーキン・バッグ」であることに疑いの余地はない。
なぜなら、それを手に入れるまでには1年弱の順番待ちをしなくてはならないからである。一般的なマーケティング理論には全く当てはまらない。「エルメス」は「バーキン・バッグ」を通じて、あからさまに顧客を差別しているのである。あたかも「あなたがバーキンを手に入れたいのなら1年待つことの覚悟が必要です。なぜならバーキンは上流階級の方のみが手にするものなのですから。」と。
しかし、この「エルメス」の姿勢に、むしろ、顧客は「差別されることの快感」をも覚えるわけである。このことをアルスター大学教授のスティーブン・ブラウン氏は著書である「ポストモダン・マーケティング」(ダイヤモンド社)で「顧客の分別を失わせる6つのモデル」として次のように照会している。
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顧客を無視することがその欲望を増大させる
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顧客を否定することがその決意を強固にさせる
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顧客を拒むことがその欲望を増大させる
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顧客の欲望の成就を引き延ばすことが顧客の心の動揺につながる
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商品・サービスを長い間待たせた後に届けることがロイヤルティを促進させる
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商品・サービスの提供を停止することが心の動揺を引き起こす
しかし、「エルメス」の実に巧みな戦略は、一般大衆向けの商品を中心に稼いでいることである。つまり、大量流通商品と希少価値商品を使い分けていることにある。ケリーやバーキンの持つ希少価値的イメージが他の大量流通商品をも引き立たせる結果に導いているのである。もはや、心理戦略的マーケティングと言っても過言ではないかもしれない。
さて、上記6つのモデルは医院経営に直接的に受け入れることは難しいのは当たり前であるが、『患者に対する謙虚な謝罪の言葉』をセットすれば十分に実践的であり、患者ロイヤルティを向上させるモデルになるであろうことは読者にはご理解いただけると思う。
『ブランド資産価値経営』(日本経済新聞社)でスコット・デイビスが調査した結果があるので紹介しておこう。
ブランドを構築させる意義が見えてきたのでは・・・。
経 歴
- 1961年、東京生まれ
- 暁星学園小中学校卒業(暁星歯学会・事務局長)
- 早稲田実業学校高等部卒業(早稲田実業学校校友会・代議員、サッカー部OB会・副会長)
- 早稲田大学専門学校建築設計課卒業・現早稲田大学芸術学校(稲門建築会会員)
- (株)銀座コージーコーナー(店舗開発設計室)
- (株)清水建設(OAセンターCAD開発)
- (株)デンタルリサーチ社(職業紹介事業・東京都第1号)
- Tokyo Expert Network of Japan(J-TEN)代表
- (株)キーステーション(統括プロデューサー)
- ニュー・マーケティング協会会員
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著 書
- 医療人事戦略(クインテッセンス出版)
- リニューアル&ニューオープン(クインテッセンス出版)
- 歯科医院経営近未来学(クインテッセンス出版)
- 挑戦する医院経営(じほう社)
- 医院経営と空間デザイン(Health Sciences Vol.24No1 2008日本健康科学学会誌掲載)