独立開業を成功へ導く経営学

統括プロデューサー 今井義博の経営学。

メディカル・ブランドの構築を考察する ①

先ず簡単な質問をさせていただこう。

1、 好きなブランドを5つあげてください。

例:
服  → ブリオーニ、アルマーニ etc
靴  → フェラガモ、クラークス etc
時計 → パテック、ロレックス etc
鞄  → エルメス、ビトン etc
車  → ロールス、フェラーリ etc

2、 その5つのブランドを選んだ理由、またはその特徴を各々教えてください。

そ して、質問されてみればブランドを選択する理由が意外と明確でないことに気づくはずである。 それこそが「ブランドの持つ力」である。つまり、そのブランドの持つオーラなのである。実はそのブランドの歴史的背景などを知るとさらにブランドに対する ロイヤリティーが高まるのだが、たいていはオーラで購入してしまっているのが現実であろうし、それもまた是である。これから述べるのは、そのオーラの分析 であり、ブランドの分析である。ブランドの分析を通じ、個人で行うべき個人経営的ブランド構築と組織的ブランド構築の認識と手法の違いを知っていただきた い。

私自身がブランドだ、という勘違いをしている読者がいれば、残酷なようだが個人でブランドを築くのは不可能である。ブランド力と個人的商品力(技術 力)は決定的な違いがあることを認識していただきたい。一言で言えば決定的な違いは「継承力」である。ブランドは世代を超えて継承する力があるのである。 つまり、そこにブランド・マーケティングが確立され、単なる技術の継承開発だけではなく、人事的継承開発があり、経営的(財務的)継承開発と創造があるの である。
しかし、ブランド力とは何かを知り、個人の商品力を高める一方で限界を知り、組織的なブランド構築を実現することも実は可能なのである。

ブランドとは何か?

ブランドとは何か?この定義付けからしなくてはならないのだが、大きな定義付けとしては「方向性、広がり、奥行き」がブランド力の総論といっていいだろう。しかし、これでは客観性にかけるので、「ブランド!ブランド!ブランド!理屈を超えた強さをいかに築くか」(ダイヤモンド社)の著者であるダリル・トラヴィスの言葉を借りることにしよう。

念のためこのダリル・トラヴィスの定義を医院(個人)経営に置き換えておこう。

ブランドとは内在する価値の成文化されない契約のことである。
ブランドとは性能に対する期待のことである。
ブランドとはユーザーに優秀さを誓うことである。
ブランドとは予測可能なものである。
ブランドとは成文化されない保証である。
ブランドとは信用証明である。
ブランドとは信頼の指標であり、リスクが小さいことを示す指標である。
ブランドとは名声である。
ブランドとは記憶の集積である。
ブランドとは以上の総和を超えるものでありうる。というよりそうでなければならない。
ブランドとは内在する価値の成文化されない契約のことである。

単に慣れてるから通うのではなく、人柄、医療技術、設備などを比較できる能力を持った患者が潜在的な判断で選択されている医院。

ブランドとは性能に対する期待のことである。

患者が医療技術そのものに既に信頼をおき、将来に渡りその信頼と同等以上の期待を持たれている医院。

ブランドとはユーザーに優秀さを誓うことである。

提供される医療技術とサービスが絶えず最先端であり、具体的に患者に伝達され、患者が選ぶ診療全てが優秀であるというメニューが絶えず更新されている医院。

ブランドとは予測可能なものである。

斬新な歯科技術を提供されたとしても、その変化に一定の安心感を持てる歯科医院。

ブランドとは成文化されない保証である。

提供される医療技術、サービスなど全てに虚偽が無いことを感じさせる医院。

ブランドとは信用証明である。

万が一提供された医療技術に問題が発生したとしても、その修正や改善の方法に信頼をおける医院。

ブランドとは信頼の指標であり、リスクが小さいことを示す指標である。

治療プロセスも結果についても信頼性がある医院。

ブランドとは名声である。

患者にとって生涯価値を感じさせる医院。

ブランドとは記憶の集積である。

医院内外で起こる全ての事柄が肯定的にとらえられる医院。

ブランドとは以上の総和を超えるものでありうる。というよりそうでなければならない。

全ては患者のために、という方向性、患者のために絶えず新しい技術を取り入れるという姿勢、新しい技術やサービスを選択し、時には提供することを中止するという判断力を持つ医院。

これら全てをご自身の医院経営に置き換えて考えてみていただきたい。もし、近隣に新しい医院がいくつできても患者が減ることなく、売上が安定していれば、ある意味ではブランド化されていると言っても良いかもしれない。継承力を除いては。

 ブランド力の数的根拠としてスコット・デイビスが調査した結果があるので紹介しておこう。

消費者の72%が、自分の好むブランドには類似する競合ブランドよりも20%割高な代金を支払っても良いと考えている。また、25%割高でもかまわないと答えた者は50%、30%割高でも良いと答えた者も40%いる。
消費者の25%が、ロイヤルティ(忠誠)を感じているブランドであれば価格は問題にしないと答えている。
購買意思決定に際して、70%以上の消費者がブランドを判断材料にしたいと述べており、実際、購買意思決定の50%以上がブランド志向で行われている。
今日の購買活動の約30%は、友人知人の勧めに影響されている。したがって、ある顧客に好ましいブランド経験を提供できれば、そのことが他の人の購買意思決定に影響を及ぼす可能性がある。
50%以上の消費者が、ブランド力が強ければそれだけ新製品の市場投入を歓迎すると考えている。また、そのように考える消費者は、自分の好きなブランドであれば、信頼できるので試してみても良いと考えている。

著者プロフィール 医科歯科開業、物件に関するご相談はこちら TEL 03-3833-3950 eMail info@keystation.com

今井 義博の写真

株式会社キーステーション 統括プロデューサー 今井 義博

経 歴

  • 1961年、東京生まれ
  • 暁星学園小中学校卒業(暁星歯学会・事務局長)
  • 早稲田実業学校高等部卒業(早稲田実業学校校友会・代議員、サッカー部OB会・副会長)
  • 早稲田大学専門学校建築設計課卒業・現早稲田大学芸術学校(稲門建築会会員)
  • (株)銀座コージーコーナー(店舗開発設計室)
  • (株)清水建設(OAセンターCAD開発)
  • (株)デンタルリサーチ社(職業紹介事業・東京都第1号)
  • Tokyo Expert Network of Japan(J-TEN)代表
  • (株)キーステーション(統括プロデューサー)
  • ニュー・マーケティング協会会員
  • 詳細プロフィールはこちら >>

著 書

  • 医療人事戦略(クインテッセンス出版)
  • リニューアル&ニューオープン(クインテッセンス出版)
  • 歯科医院経営近未来学(クインテッセンス出版)
  • 挑戦する医院経営(じほう社)
  • 医院経営と空間デザイン(Health Sciences Vol.24No1 2008日本健康科学学会誌掲載)